イントロダクション

2019年8月、“ハマのドン”こと藤木幸夫が横浜港をめぐるカジノ阻止に向けて立ち上がった。御年91歳。地元政財界に顔が効き、歴代総理経験者や自民党幹部との人脈、田岡一雄・山口組三代目組長ともつながりがあり、隠然たる政治力をもつとされる保守の重鎮だ。
その藤木が、カジノを推し進める政権中枢に対して、真っ向から反旗を翻した。今の時代が、戦前の「ものを言えない空気」に似てきたと警鐘を鳴らし、時の最高権力者、菅総理と全面対決した。
決戦の場となったのは横浜市長選。藤木が賭けたのは、住民投票を求める署名を法定数の3倍をも集めた市民の力だった。裏の権力者とされる藤木が、市民とカジノ反対の一点で手を結び、時の総理と官房長官が推し進めた「カジノ誘致」の国策阻止を成し遂げた。
パーソナルな話題があふれるこの情報社会の中で、本来の保守とはなにか、人心を動かすとはどういうことか、社会のありよう、メディアの在り方、民主主義とはなんなのか。
本作を手掛けた監督はテレビ朝日「報道ステーション」プロデューサーを務めた松原文枝。プロデューサーは「テレメンタリー」の江口英明と「民教協」の雪竹弘一。ナレーションにはリリー・フランキーが加わった。藤木が市民と手を取り合い、カジノ誘致を覆したその軌跡を追うとともに、市民の声が届かない今の時代の政治権力をどう見るのか。政治を諦め無関心となる間に、国の根本となる重要政策の転換がなされ、手遅れの事態となる。
藤木の闘いは今の政治を変えて行くために何が必要なのかーここには一条の光がある。
主権は官邸にあらず、主権在民
主権は官邸にあらず、主権在民

ストーリー

世界のカジノ王「ラスベガス・サンズ」CEOのアデルソンは、日本進出を狙っていた。1兆円という巨額の投資額。ターゲットは横浜港の山下ふ頭だった。藤木が長年仕切ってきた現場だ。アデルソンは、トランプと安倍の首脳会談の前に開かれた朝食会にも出席している。
態度を曖昧にしてきた市長の林文子は、カジノ誘致に向けて動き出した。これに敢然と立ち向かったのが藤木だった。藤木は横浜大空襲を生き延び、父親の時代からの港湾を引き継いできた。
藤木の反対はただの反対ではない。藤木が辿ってきた背景がある。港は苦難の歴史だった。日雇いで危険と隣り合わせ。荒くれ者が集まり、博打は当たり前。野毛の木賃宿でその日暮らしの不安定な生活。家族持ちは、はしけの中での水上生活だ。その港の苦難を知り、博打が行われていた時代を知り尽くしているからこその反対だ。身体を張った勝負師の行動は、多くの市民、自民党の長老、カジノ側の人物までも動かす。カジノ関係者が公にしたその実態は驚愕だ。
一方、横浜市民のカジノ反対の動きは燎原の火のごとく広がっていた。コロナ禍の中で、市民は住民投票を求めて法定数の3倍を超える19万超の署名を集めていた。だが、その声は市議会に届かず、横浜市長選に持ち込まれる。藤木は無名の新人を押し立て、現職市長、そして、菅側近の現職閣僚を相手に闘うことになる。無謀とも言える闘い。藤木は市民の力にかけた。藤木と署名を集めた市民とを結びつけたのはー。
藤木が長年大切にして義理人情恩返しの世界が結合し、大きなうねりとなった。

キャスト

ハマのドン藤木幸夫

ハマのドン
藤木幸夫

1930年(昭和5年)横浜市に生まれる。戦時中は県立神奈川工業高校で軍需工場に従事。1945年横浜大空襲を潜り抜け、戦後、町の不良少年を集めて少年野球チーム「レディアンツ」を結成。1953年早稲田大学政経学部卒。外資の船会社に就職後、藤木企業に入社。港湾荷役事業に従事する。神戸港で港湾荷役事業を行っていた山口組三代目田岡一雄組長とも知己を得る。藤木企業会長、横浜港運協会前会長、港湾事業者の元締め的存在。地元政財界に顔が効き、歴代総理や自民党幹部との人脈の広さ、その政治力から“ハマのドン”の異名を持つ。横浜ハーバーリゾート協会を作り会長に就任。カジノ反対を貫き、誘致を推し進める菅総理と全面対決、カジノ誘致を阻止した。強面だが、その素顔は、読書家で知識人、早寝早起き、港をこよなく愛する91歳。(撮影時)

スタッフ

  • 監督
    松原文枝

    1991年テレビ朝日入社。1992年政治部・経済部記者。2000年から「ニュースステーション」、「報道ステーション」ディレクターを経て同番組チーフプロデューサー。2015年に経済部長、報ステ特集「独ワイマール憲法の教訓」(2016年)でギャラクシー賞テレビ部門大賞、JCJ賞。テレメンタリー「史実を刻む~語り継ぐ“戦争と性暴力”」(2019年)でアメリカ国際フィルム・ビデオ祭銀賞。2019年放送ウーマン賞。2019年からビジネスプロデュース局イベント戦略担当部長を務める。
  • プロデューサー
    江口英明

    1991年テレビ朝日入社。「ザ・スクープ」「サンデープロジェクト」「報道ステーション」など30年以上にわたり報道系番組を担当。
    事件、政治、国際問題など多岐にわたる現場を取材し、現在は報道ドキュメンタリー系番組のプロデューサー・担当部長を務める。
  • プロデューサー
    雪竹弘一

    1990年 テレビ朝日入社。「ミュージック・ステーション」、「リングの魂」などバラエティー番組制作を経て現在、ドキュメンタリー番組 「日本のチカラ」「民教協スペシャル」の総合プロデューサー。
  • ナレーション
    リリー・フランキー

    1963年生まれ、福岡県出身。
    イラストやデザインのほか、文筆、写真、作詞・作曲、俳優など、多分野で活動。初の長編小説「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」は06年本屋大賞を受賞。
    映画では、『ぐるりのこと。』(08)でブルーリボン賞新人賞、『そして父になる』(13/)で第37回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞。第71回カンヌ国際映画祭では、主演を務めた『万引き家族』(18)がパルムドールを受賞。
撮影:
金森 之雅
花山 陽子
鈴木 正隆
岩切 天平
齋藤 茂
 編集:
東樹 大介
音響効果:
宮本 陽一
菅原 和
MA:
兼清 和寛
特別協力:
千葉 史子
山根将人 井上祐介 塚本勝彦 岩佐亮太郎
竹本一良 森正 石原康伸 小沼梨紗 村田奈緒子
監修:
秦 聖浩
松本 仁司
川辺 竜之
著作権監修:
伊藤 真
資料協力:
堀口利通 五十嵐英寿 別所弥八郎 押尾泰 橋口普
神奈川県ドローン協会 横浜港湾福利厚生協会 横浜開港資料館
横浜都市発展記念館 横浜市史資料室 横浜市港湾局
東京大空襲・戦災資料センター 朝日新聞社 AP/アフロ
制作協力:
民間放送教育協会
 
配給宣伝:
太秦
小林 三四郎
今村 花
製作:
テレビ朝日
   

2023年/日本/DCP/100分

コメント

(敬称略・五十音順)
  • とにかく、最後は正義が勝ちます。安心してこの映画をお楽しみ下さい。大阪の人も、長崎の人もどうぞ安心してご覧ください。ご存知のかたも多いと思いますが、この映画は、テレビのドキュメンタリー番組が元になっています。僕自身もテレビによく出ていた頃があって、その時も「嘘です」と自分の顔に書いてあることがわかっていた時が、しばしばありました。ドラマではない、生放送で、人物の顔がクローズアップで写されると、被写体になった人間にとってこれほど恐ろしいものはありません。心の奥まで見透かされるのです。
    久米宏
    (元テレビ司会者)
  • 百年後の世代に胸を張ってこの国を残せるだろうか……。横浜を守った藤木さんや住民たちの奮闘を観て、改めてその思いを強くした。政治が必ず正しい方向に導いてくれるとは限らない。最後は自分たちで進むしかない。
    小塚かおる
    (日刊ゲンダイ第一編集局長)
  • オヤジどもが牛耳る政治に辟易していたら、こんな「オヤジ」がいたのか!
    さわやかな風が胸を吹き抜けた。横浜のハートとも言える港湾に生きた一人の男の実に深い人生の機微を小気味好く描いている。極めて政治的なテーマをしたたかに撮り切った監督に拍手!
    鎌仲ひとみ
    (映像作家)
  • 横浜でその名を聞いたら直立不動、“生きる伝説”として語られてきたハマのドンでありゴッドファーザーが、藤木幸夫だ。それが都市伝説ではなく、リアルな存在だったと明らかにしたのが、本作の特筆すべき点である。何よりこの令和の時代に、まだこんなにも義理人情に厚い漢がいたとは!東映のヤクザ映画を観たような、読後感である。必見だ。
    中村高寛
    (映画監督)
  • 権力と市民、どちらの側に立つのか。「ハマのドン」の脳裏には、港で汗を流し、死んでいった労働者たちの姿が焼きついている。絶対に譲れないものを守るため、ドンは市民と手を組み、権力に闘いを挑んだ。近年、最も胸がスカッとした物語。ドキュメンタリーの底力を見た。
    星野博美
    (作家)
  • 港に博打は無用、親子別れを起こすカジノは絶対に作らせないと、国家権力に立ち向かう反骨の人。港を愛し、仕事を愛し、人を愛し、横浜を愛する情愛の人。矍鑠たる卒翁、藤木幸夫の生身の姿に松原文枝監督が肉薄する。
    前川喜平
    (元文部科学事務次官)
  • 観た、泣いた、感動した。
    毀誉褒貶の多い「ハマのドン」こと藤木幸夫氏。人生91年を生き抜いて故郷である、横浜の港を命を掛けて守り通す。バクチは許さない、カジノは作らせない。 この情熱は何処から湧いて出るのか?今はなくなりつつある任侠道の世界から来ているのか?昭和が生んだ人物であるとも言える。
    奥谷禮子
    (ザ・アール創業者)
  • 霞が関の官僚を冷徹に支配し震え上がらせた「恐怖政治家」菅義偉。この、首相にまで登り詰めた稀代の強面を張り倒し引導を渡した男が貫いた「人間の筋」を、我々皆が見習いたい。そうすれば必ず日本は再びまともになる。
    寺脇研
    (元文部科学省官房審議官)
  • テレビ版は観ている。明らかに進化した。藤木と横浜のこれまでの軌跡に、戦後日本の歴史がぴたりと重なる。保守の重鎮の大きな転回。観ながら何度も声が洩れる。失意と快哉で揺さぶられる。そして気づく。藤木は転回していない。軸足がないのは日本政治の側なのだ。
    森達也
    (映画監督)
  • 映画のエンドロールの一番最後に、「監督 松原文枝」と文字が出で、画面中央でぴたっと止まった。その瞬間、僕は思わず拍手を送りたくなった。“ハマのドン”の発する言葉はどれも粋で、ちからがある。けれどもこの映画のテーマは、彼の人間的魅力だけでなく、私たちの社会のいちばん大切な理念=<主権在民>という、いま忘れられかけている、戦後日本の宝物なのだと気づいた。
    金平茂紀
    (ジャーナリスト)
  • 藤木氏と菅前首相のカジノを巡る仁義なき闘いー。目先の利益でなく、後世を担う子どもたちにどんな社会を遺したいのか。ハマのドンの生き様は、私たちに、いかに生きるかを問いかける。
    望月衣塑子
    (「東京新聞」記者)
  • 言葉が人を動かす。諦めから人を躍動させる。横浜市のカジノ誘致に反対したハマのドンの戦いは、シンプルな気づきを与えてくれる。あなたこそ主権者なのだと。この政治は、あなたが選んでいるのだと。この劣化する社会に対して無力だと感じる人ほど見てほしい。
    斉加尚代
    (映画『教育と愛国』監督)

劇場情報

2024年10月1日現在

自主上映会

 
  • 11月24日(日)
  • 狛江市西河原公民館ホール
  • 狛江市元和泉2-35-1
  • 主催:キタコマ映画祭
  • ①10:30~ ②14:00~
  • ※松原監督挨拶予定
 
  • 自主上映会の実施が可能です。
  • 詳しくはinfo@uzumasa-film.comにご連絡ください。

北海道・東北

地域 劇場 公開日 備考
北海道 シアターキノ 上映終了
北海道 シネマ・トーラス 上映終了
北海道 シネマアイリス 上映終了
青森 シネマディクト 上映終了
岩手 盛岡ルミエール 上映終了
岩手 みやこシネマリーン 上映終了
宮城 フォーラム仙台 上映終了
福島 フォーラム福島 上映終了
山形 フォーラム山形 上映終了

関東

地域 劇場 公開日 備考
東京 新宿ピカデリー 上映終了
東京 ユーロスペース 上映終了
東京 K's CINEMA 上映終了
東京 MOVIX昭島 上映終了
東京 Morc阿佐ヶ谷 上映終了
東京 CINEMA Chupki TABATA 上映終了
東京 アップリンク吉祥寺 上映終了
東京 下高井戸シネマ 上映終了
神奈川 横浜シネマ・ジャック&ベティ 上映終了
神奈川 横浜シネマリン 上映終了
神奈川 横浜ブルク13 上映終了
神奈川 イオンシネマみなとみらい 上映終了
神奈川 イオンシネマ港北ニュータウン 上映終了
神奈川 あつぎのえいがかんkiki 上映終了
神奈川 シネマアミーゴ 上映終了
千葉 MOVIX柏の葉 上映終了
埼玉 MOVIX三郷 上映終了
埼玉 川越スカラ座 上映終了
埼玉 深谷シネマ 上映終了
茨城 あまや座 上映終了
栃木 宇都宮ヒカリ座 上映終了
群馬 シネマテークたかさき 上映終了
群馬 前橋シネマハウス 上映終了

信越・北陸

地域 劇場 公開日 備考
新潟 シネ・ウインド 上映終了
新潟 高田世界館 上映終了
長野 長野相生座・ロキシー 上映終了
長野 松本CINEMAセレクト 上映終了
富山 ほとり座 上映終了
富山 御旅屋座 上映終了
石川 シネモンド 上映終了
福井 メトロ劇場 上映終了

東海

地域 劇場 公開日 備考
愛知 名古屋シネマテーク 上映終了
愛知 ミッドランドシネマ名古屋空港 上映終了
愛知 刈谷日劇 上映終了
三重 伊勢・進富座 上映終了
静岡 シネ・ギャラリー 上映終了
静岡 シネマイーラ 上映終了

近畿

地域 劇場 公開日 備考
大阪 第七藝術劇場 上映終了
大阪 シアターセブン 上映終了
大阪 なんばパークスシネマ 上映終了
大阪 MOVIX堺 上映終了
京都 京都シネマ 上映終了
京都 京都みなみ会館 上映終了
兵庫 元町映画館 上映終了
兵庫 シネ・ピピア 上映終了

中国・四国

地域 劇場 公開日 備考
岡山 シネマ・クレール 上映終了
広島 横川シネマ 上映終了
広島 福山駅前シネマモード 上映終了
山口 山口情報芸術センター[YCAM] 上映終了
香川 ホール・ソレイユ 上映終了
愛媛 シネマルナティック 上映終了

九州・沖縄

地域 劇場 公開日 備考
福岡 KBCシネマ 上映終了
佐賀 シアター・シエマ 上映終了
大分 シネマ5 上映終了
大分 ブルーバード劇場 上映終了
熊本 Denkikan 上映終了
宮崎 宮崎キネマ館 上映終了
鹿児島 ガーデンズシネマ 上映終了
沖縄 桜坂劇場 上映終了
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